サンリオ社長・辻朋邦さんを株主目線で分析|経歴・父と祖父・改革と持株数

サンリオ辻朋邦氏
この記事の結論
  • 辻朋邦さんは創業者の孫。父の急逝をきっかけに入社し、31歳で社長に。赤字のサンリオを5期連続の増収増益に導きました
  • 本人名義と資産管理会社で約12%を持つ大株主。株価は就任後に大きく上がりましたが、2026年は高値から約35%下にあります
  • 総会ではほぼ全ての質問に自ら答える社長。専門はプロに任せ、判断と責任を担うトップだと感じています

よくばり夫婦です。

私たちはサンリオの株を長期で持ちながら、短期の売買もしています。

株主総会にも、2025年、2026年と続けて出席しました。

これまで、専務の中塚亘さん、ピューロランド館長の小巻亜矢さんを取り上げてきました。今回は、いよいよその社長です。

サンリオの辻朋邦(つじ・ともくに)社長について、経歴や家族との関係、改革の中身、持株数を、決算資料やインタビュー、株主総会の質疑応答要旨で確認しました。

2026年9月28日時点の公開資料にもとづいています。特定の銘柄の購入をすすめるものではありません。

目次

辻朋邦さんはどんな人?

年できごと
1988年生まれ
2011年慶應義塾大学 文学部(社会学専攻)を卒業。食品会社に就職
2013年父・辻邦彦副社長が急逝
2014年サンリオに入社(25歳)。1年目は経理部
2016年取締役(27歳)
2017年専務取締役
2020年代表取締役社長(31歳)

出典:有価証券報告書、三田評論(2023年6月)、VIPO講演(2023年11月)

慶應義塾には中学から通っていて、ご本人は「私は中等部、塾高から大学に進学しました」と話しています。

大学卒業後は、サンリオとは関係のない食品会社に就職しました。

小さい頃からキャラクターに囲まれて育ち、2026年の株主総会では、子どもの頃に直営店「いちごのお家」でお菓子を選んだ思い出も話していました。

父の急逝で、サンリオへ

転機は2013年です。

副社長だった父・辻邦彦さんが、出張先のロサンゼルスで急逝しました。61歳でした。

父には生前、「いつか(サンリオに)入るんだろう?」と言われていたそうです。

「2013年に父が急逝し、これをきっかけにサンリオに入りました」とご本人は振り返っています。

父・邦彦さんと、祖父・信太郎さん

父は海外ライセンスの立役者

邦彦さんは、海外事業を担当した副社長でした。

北米で、グッズを売るビジネスから、ハローキティのライセンス収入で稼ぐビジネスへと大きく転換したと報じられています。

亡くなったときの日経新聞の見出しは「ライセンス事業、稼ぎ頭の部門 立役者を失う」でした。

祖父は60年間社長を務めた創業者

祖父の辻信太郎さんは、1960年にサンリオを創業し、2020年まで60年間社長を務めました。現在は名誉会長です。

「みんななかよく」という企業理念も、信太郎さんの思いから生まれています。

朋邦さんは、祖父から戦争体験の話を「何十回と聞かされてきました」と語っています。

一方で、経営の考え方は違っていたようです。

講演では、祖父について次のように話しています。

  • 「会長は昨対(前年比)を重視する考え方が大きく、前年の売上さえ超えていればよいという感覚があり、それは私は違うと思っていました」
  • 「改革をやろうとするとことごとく会長から駄目だと言われてきた時期も長かった」

なお、母の辻友子さんもサンリオの常務執行役員で、株式の2.1%を持つ大株主です。

引き継いだのは「ブームのあと」のサンリオ

時期サンリオの状況
1999年3月期ハローキティブームで売上高1,500億円、営業利益180億円
2014年3月期海外ライセンスが伸び、営業利益210億円で当時の過去最高
2015年3月期〜7期連続の減収減益
2021年3月期26年ぶりの営業赤字(▲32.8億円)

出典:Business Journal(2020年6月)、日本経済新聞、東洋経済オンライン

2000年代以降、ハローキティは海外のセレブにも愛用され、アパレルブランドとのコラボで欧米に広がりました。2014年ごろは、営業利益の約9割を海外で稼いでいたそうです。

しかし、その後は欧米のライセンスが失速します。2016年の報道では、北米のロイヤリティ売上が40%減、欧州が34%減と大きく落ち込みました。

朋邦さんは、入社後に営業を担当したとき、キャラクターのブランド力が下がっていることに危機感を覚えたといいます。

「ハローキティを付けて売上が上がればそれでいいじゃないかと思って、ハローキティの事例ばかり紹介していました」とも振り返っています。

祖父の経営からの脱却|「聖域」にメスを入れた

社長交代が決まった2020年6月の決算説明会で、朋邦さんは次のように話しています。

「経営戦略を踏襲するつもりはいっさいございません。サンリオのダメな部分は徹底的に変革させながら、素晴らしい企業に成長していきたい」

60年間、社長が一度も代わらなかった会社です。ご本人も「60年間創業社長が代わらずワンマンだと、社員や会社を守る意識が強くなる」と話しています。

聖域だった物販にメス

いちばん大きかったのは、「聖域」と呼ばれていた物販(グッズ)の見直しです。

当時は「赤字にしてでも売上を上げろ」という感覚で、新商品を出し続けた結果、商品の種類(SKU)は4,800まで増えていました。

1か月に約400の新商品が出る計算です。

ところが、サンリオショップに来るお客さんは月に1回程度の来店が多く、1回で目にする商品は限られます。「残り380はどうなるのか」と考えたそうです。

「いわゆる聖域とよばれる物販事業にもかなりメスを入れたので、長年サンリオで働いている方からしてみたら『そんなところまでテコ入れするの??』というのが正直な反応だったと思います」と語っています。

人と組織も入れ替えた

  • 外部人材の登用:2021年に、BCG出身の中塚亘さん、デロイト出身の大塚泰之さんを迎え、のちに2人とも専務取締役に
  • 経営陣の若返り:取締役を30〜50代に入れ替え
  • マーケティング部の新設:入社当時、サンリオにはマーケティング部がなかった
  • キャラクター戦略:約450のキャラクターのうち、売上の大半は上位30ほど。ライセンスの営業でも、ハローキティ以外のキャラクターを提案できる体制に

外部の人材を入れた理由を社員に説明するときは、「外部の人が優秀でプロパーの人が力不足だからではない」と伝えたそうです。

社長就任後の成績

社長に就任した2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)は、コロナ禍で営業赤字でした。

そこから5期連続の増収増益で、2026年3月期の営業利益は778億円。2014年3月期の最高益(210億円)の3.7倍になりました。

株価も大きく上がりました。有価証券報告書によると、2021年3月末から5年間の株主総利回り(配当込み)は919.7%で、同じ期間のTOPIX(202.2%)を大きく上回っています。

一方で、株価は2025年3月期の高値から約35%下がっています。

2026年は、米国子会社を兼務していた元常務の不適切な報酬の問題で決算発表が延期されました。北米のライセンスの減益も重なり、株主総会でも株価についての質問が相次ぎました。

持株数は本人名義だけで約151億円

名義株数割合評価額
辻社長本人248.8万株1.0%約151億円
清川商事1,971万株8.1%約1,196億円
光南商事783万株3.2%約475億円

株数は2026年3月末時点で、4月1日の株式分割(1株→5株)の前の数字。評価額は分割後の株数に換算し、2026年9月24日の終値1,213.5円で計算した目安です

清川商事と光南商事は、報道では辻社長の資産管理会社とされています。本人名義と合わせると、発行済株式の約12%です。

株価が下がれば、社長自身の資産も大きく減ります。株主と同じ船に乗っている社長だといえます。

2026年3月期の報酬は1億8,800万円で、うち4,700万円は株式による報酬です。不適切報酬の問題を受けて、月額報酬の30%を3か月返納しています。

一方で、株を売った場面もあります。

  • 2023年11月:資産管理会社2社が、会社の自社株買い(公開買付け)に応じて一部を売却
  • 2024年11月:辻社長も、三菱UFJ銀行などとともに株式を売り出し。発表の翌日、株価は一時17%下落

大株主の社長が株を売ると、株価には重しになります。株主としては、今後も売却の動きは見ておきたいところです。

株主総会で見た辻社長

ここからは、私たちが総会で実際に見た辻社長の様子です。

ほぼ全ての質問に自ら答える

一番印象に残るのは、ほとんどの質問に社長自身が答えることです。

専門的な質問では、専務や常務執行役員に説明を任せます。それでも、その前に必ず自分で一言、答えていました。

2026年の質疑応答要旨を見ると、19問のうち17問に辻社長が回答しています。担当役員が補足した5問も、まず社長が答えてから担当役員につないでいました(要旨では、担当役員だけが答えた質問も2問ありました)。

ファンの質問にも正面から

サンリオの総会には、経営についての質問だけでなく、キャラクターのファンからの質問もあります。

  • はぴだんぶいに、モンキチが入らなかったこと
  • ポチャッコの姿が三頭身から二頭身に変わったこと
  • ガチャガチャなどのランダム商品を減らしてほしい

こうした質問にも、辻社長は正面から答えていました。答えになっているかどうかより、答えようとする姿勢が大事だと感じます。

ポチャッコの質問には「ご心配やショックなお気持ちにさせてしまったことは、大変申し訳なく思っている」と答え、「ポチャッコにも伝えておく」と話していました。

毎回、小さな子どもからの質問もあり、そのときの辻社長はいつもうれしそうです。

発言から人柄が伝わる

総会での発言が多いので、人柄がよくわかります。

サンリオは英語教材や英会話教室の事業も手がけています。英語教育についての質問では、「子どもの頃から勉強が嫌いで大変だった。勉強がつらい時間ではなく、楽しい時間になるようにしたい」という趣旨の話をしていました。

「サンリオのバスボムを使ってお風呂に入っている」と話していたこともあります。

専門はプロに任せ、責任はトップが持つ

冷たい印象の人ではなく、穏やかな人です。

正直に言うと、社長自身にとても専門的な知見があると感じる場面は多くありません。

それでも、2代目として優秀な人を集め、専門的なことはプロに任せながら、トップとして判断し、説明し、責任を取る。そのスタンスを強く感じます。

世襲には、正直あまり良い印象はありません。

ただ、エンタメの会社であることや、社内をまとめる力を考えると、サンリオの場合は創業家での交代で良かったのではないかと思っています。何より、株価の上昇がそれを物語っています。

気になる点

  • 海外子会社の管理:不適切報酬の問題を受けて、本社による監督の強化を進めています。再発防止策がきちんと機能するかは見ておきたい点です
  • 社長への依存:創業家出身の若い社長に求心力が集まっている分、経営が社長個人に依存する面もあります
  • 大株主の売却:資産管理会社を含めた大株主の株の動きは、株価に影響します

これから見ていきたいこと

2026年9月時点で、特に次の4点に注目しています。

  1. 11月の決算:北米のライセンスが回復するか
  2. ガバナンス:再発防止策が実行され、株価の信頼が戻るか
  3. 長期ビジョン:時価総額5兆円に向けた、ゲームや映像などの成長投資
  4. 株主還元:配当性向30%以上の方針と、自社株買いの判断

最後に

父の急逝をきっかけに入社し、31歳で60年ぶりの社長交代を担った辻朋邦さん。

祖父の経営の「聖域」に手を入れ、外から人を集めて、赤字の会社を5期連続の増収増益に変えました。

総会で見る姿は穏やかで、どんな質問からも逃げない社長です。

本人と資産管理会社で約12%を持つ社長と同じ船に乗る株主として、2026年の逆風をどう乗り越えるか見ていきたいと思います。

本記事は個人の考えをまとめたもので、特定の銘柄の購入をすすめるものではありません。株価は業績や市場環境で大きく変動します。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

参考資料

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この記事を書いた人

30代共働き夫婦と4歳の娘の3人家族。都内のサラリーマンとして10年以上働きながら、投資歴10年以上で総資産6,000万円超に。入社時から資産形成を意識していましたが、保険見直しや無駄な支出カットなどの試行錯誤を重ね、今ではFIREを目指しています。
実際の投資成績、家計、資産推移をありのままに発信します。

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