- 中塚亘さんは、オリエンタルランドとコンサルを経て入社した専務。全社の戦略・海外の統括・キャラクターを担当
- 国内とアジアで「売る」のが大塚さんなら、会社全体と海外の「方向を決める」のが中塚さん
- 欧州は好調、北米は減益。海外を束ねてからの成績は、11月の決算から見えてきます
よくばり夫婦です。
私たちはサンリオの株を長期で持ちながら、短期の売買もしています。決算資料には毎回目を通し、株主総会にも2025年、2026年と続けて出席しました。
私たちの愛読書に『株で儲けたきゃ「社長」を見ろ!』(田端信太郎さん)という本がありますが、社長を見るなら、社長が選んだ右腕も見ておきたいところです。
今回は、辻朋邦社長を支える専務の一人、中塚亘(なかつか・わたる)さんを取り上げます。
経歴や持株数に加えて、担当する分野の成績と、もう一人の専務・大塚泰之さんとの違いを、有価証券報告書、決算資料、組織図で確認しました。
サンリオの経営は「社長+専務2人」
サンリオの取締役は9人で、うち5人が社外です。
事業を動かしている社内の取締役は、社長と専務2人の3人です。
| 担当 | ひとことで言うと | |
|---|---|---|
| 辻 朋邦 社長 | 会社全体 | 最終的な判断と説明の責任 |
| 中塚 亘 専務 | 経営戦略、グローバル統括、ブランド管理 | 会社全体の戦略、海外の統括、キャラクター |
| 大塚 泰之 専務 | 営業、グローバル物販(アジアの子会社のCEOも兼務) | 国内の営業と、世界のグッズ販売 |
2020年7月、創業者の辻信太郎さんから孫の辻朋邦さんに社長が交代しました。
創業以来初めての交代で、辻社長は当時31歳です。
その翌年の2021年6月、外部から同時に入社したのが、BCG出身の中塚さんとデロイト出身の大塚さんでした。
2人は2022年に常務取締役、2024年に専務取締役と、そろって昇格しています。
身内や古参で固めず、コンサル出身の2人を右腕に据えた。 この人選が、その後の業績回復を支えたと私たちは見ています。
中塚亘さんはどんな人?
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1983年 | 生まれ。慶應義塾大学を卒業 |
| 2005年 | オリエンタルランドに入社(現場のオペレーション、マーケティング) |
| 2009年 | A.T.カーニーに入社 |
| 2016年 | タイのホテル会社(KOKOTEL)でCOO |
| 2019年 | ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社 |
| 2021年 | サンリオに入社。常務執行役員(38歳) |
| 2022年 | 常務取締役 |
| 2024年 | 専務取締役(41歳) |
出典:有価証券報告書(2026年3月期)、GLOBIS知見録のプロフィール
テーマパークの現場、コンサルの戦略、ホテル会社の経営。3つを経験してからサンリオに来た人です。
スペインのIEビジネススクールでMBAも取得しています。出身地や出身高校は公表されていません。
サンリオに来た理由
入社のきっかけは、コンサルタントとしてサンリオと仕事をしたことでした。
採用サイトの役員インタビューでは、「もの凄くポテンシャルがある」会社だと感じたこと、社長交代のときに聞いた長期ビジョンの実現に貢献したいと思ったことを語っています。
辻社長も東洋経済のインタビュー(2024年7月)で、中塚さんを迎えた理由を話しています。
社内で数字にもとづいた議論が十分にできていなかったため、経営戦略の経験がある中塚さんを入れて、そこを変えていったそうです。
「瞬間的なヒットだけを狙う会社でありたくない」
中塚さんの考え方がよく表れているのが、2026年4月のJBpressのインタビューの見出しにもなったこの言葉です。
サンリオは売上や利益より上位の目標に、キャラクターと過ごす時間を測る独自の指標「サンリオ時間」を置いています。
有価証券報告書にも「短期の爆発的な人気を追うことよりも、長期的に安定した人気を得る方針」と書かれています。ブームに頼らない会社のほうが、長く株を持つ側としても安心です。
一方で、コンサル出身でありながら、採用サイトでは、自分の美意識を信じて「意思決定できる人が多い」ことをサンリオの特徴に挙げています。
数字で管理しつつ、キャラクターづくりの感性はつぶさない。サンリオをよく理解している人だと感じます。
担当は「全社の戦略・海外の統括・キャラクター」
中塚さんの担当は、入社してから次のように変わってきました。
| 時期 | 担当 |
|---|---|
| 2021年 | 社長室(入社時) |
| 2022年 | 事業戦略本部 |
| 2024年 | 経営管理本部、人事総務本部、グローバル戦略室 |
| 2025年 | 経営戦略本部、ブランド管理本部、人事本部、社長室、グローバル戦略室 など |
| 2026年 | 経営戦略本部、グローバル統括本部、ブランド管理本部 |
出典:有価証券報告書(2026年3月期)。各年4月または6月の就任
社長室から始まり、戦略、管理、人事と、会社の中枢を順に任されてきた人です。
海外には2024年からグローバル戦略室の担当として関わり、2026年4月に、海外の子会社を束ねるグローバル統括本部の担当になりました。
2026年4月1日時点の組織図を見ると、担当する3つの本部は次のような役割です。
| 本部 | 中身 |
|---|---|
| 経営戦略本部 | 会社全体の戦略づくり。社長室もこの本部にあります |
| グローバル統括本部 | グローバル戦略室、グローバルパートナー開拓室。北米・欧州・アジアなど海外の子会社は、ここにつながっています |
| ブランド管理本部 | キャラクターのブランド管理 |
出典:サンリオ公式サイト「組織図」(2026年4月1日現在)
組織図では、ピューロランドを運営するサンリオエンターテイメントなど国内のグループ会社も、経営戦略本部の中の社長室とつながっています。中塚さん自身も、サンリオエンターテイメントの取締役を務めています。
どのキャラクターを、どの国で、どう伸ばすかを決める立場だと考えるとわかりやすいと思います。
大塚さんとの違い
中塚さんと大塚さんは、同じ2021年6月に入社し、同じタイミングで昇格してきました。持株数も、株式による報酬の額も同じです。
違うのは、担当と経歴です。
仕事の分担
| 仕事 | 中塚さん | 大塚さん |
|---|---|---|
| 会社全体の戦略 | ○ | |
| キャラクターのブランド管理 | ○ | |
| 海外の子会社の統括 | ○ | |
| アジアの子会社の経営(CEOを兼務) | ○ | |
| 国内の営業(店舗・ライセンス・ネット販売) | ○ | |
| 世界で売るグッズの企画・製造 | ○ |
出典:サンリオ公式サイト「組織図」(2026年4月1日現在)、有価証券報告書
海外の子会社は、組織図の上では中塚さんのグローバル統括本部につながっています。ただし、台湾・香港・韓国・中国(上海)・東南アジアの子会社のCEO(現地のトップ)は大塚さんが兼ねています。
つまり、海外全体の統括は中塚さん、アジアの現地経営は大塚さんという分担です。
有価証券報告書の略歴を見る限り、北米や欧州の子会社のトップを兼ねる取締役はいません。北米と欧州については、本社で見ているのは中塚さんの本部だと考えられます。
経歴の違い
| 中塚さん | 大塚さん | |
|---|---|---|
| 生まれ | 1983年(43歳) | 1973年(53歳) |
| 学歴 | 慶應義塾大学、IEビジネススクール(MBA) | 公表されていない |
| 最初の会社 | オリエンタルランド(テーマパーク) | ダイエー(大手スーパー) |
| コンサル | A.T.カーニー、BCG | トーマツ、デロイト(執行役員まで) |
| 海外経験 | タイのホテル会社でCOO | デロイトのタイ法人に出向 |
| サンリオで最初の担当 | 社長室 | 物販事業本部長 |
出典:有価証券報告書(2026年3月期)、GLOBIS知見録。年齢は2026年9月時点
コンサル出身で、タイで働いた経験がある。ここまでは、2人はよく似ています。
違いが出ているのは、コンサル会社の種類と、サンリオで最初に任された仕事です。
一般に、A.T.カーニーやBCGは経営トップの戦略を手伝う「戦略系」、デロイトは戦略から業務の改善まで幅広く手がける「総合系」と呼ばれます。
そして、中塚さんの最初の担当は社長の近くで戦略を考える社長室、大塚さんは店舗やグッズの物販事業本部長でした。
表に出て語る中塚さん、成績で語る大塚さん
外への発信にも差があります。
中塚さんは、2024年の中期経営計画の資料に辻社長と並んで名前が載り、2026年にはJBpressのインタビューでサンリオ時間や共通ID「Sanrio+」について語るなど、会社の戦略を外に向けて話す機会が多い人です。
一方の大塚さんの発言は、私たちが調べた範囲では、採用サイトのインタビューと、2026年の総会での1回の回答くらいでした。
会社全体と海外の方向を決めて、外に語るのが中塚さん。国内とアジアの現場で売上と利益をつくるのが大塚さん。
そして、最終的に判断し、総会で説明の責任を負うのが辻社長。3人の役割は、きれいに分かれていると感じます(これは私たちの見方です)。
👉大塚さんの経歴と成績は、別の記事で詳しくまとめています。

担当する分野は、今どうなっている?
では、中塚さんが担当する「全社の戦略」「海外」「キャラクター」は、今どんな状態なのでしょうか。
なお、海外の子会社は12月決算のため、海外の業績は3か月遅れで決算に反映されます。グローバル統括本部の担当になった2026年4月以降の海外の数字が初めて出るのは、11月の決算です。ここで紹介するのは、中塚さんが引き継いだ時点の状況です。
全社戦略|5期連続の増収増益、最高益は3期連続
2026年3月期の売上高は1,940億円、営業利益は778億円で、5期連続の増収増益です。営業利益は、2024年3月期に10期ぶりに過去最高を更新してから、3期続けて最高を更新しています。
中期経営計画で掲げた「2027年3月期に営業利益650億円以上」という目標も、1年前倒しで大きく超えました。期初は営業利益600億円と控えめな計画を出し、3回引き上げての着地です。
一方で、2026年8月の決算説明会の質疑では、「中期経営計画の公表を取りやめる」と説明しています。次の目標をどう示すかは、2027年3月期の本決算の説明会に向けて検討中とのことです。
戦略担当の中塚さんが、この先どんな目標で会社を語るのかにも注目しています。
海外|利益の約4分の3を稼ぐ柱
サンリオが地域ごとの実力を見るために使っている「貢献利益」で見ると、利益の約74%を海外が稼いでいます。
。日本25.7、アジア35.9、米州29.1、欧州9.3-1024x493.webp)
このうちアジア(35.9%)は、大塚さんが現地の子会社のCEOを兼ねている地域です。米州(北米と南米、29.1%)と欧州(9.3%)を合わせると、海外の約半分です。
海外で働く社員は約400人と全体の2割ほどですが、ライセンスビジネスなので、少ない人数で大きな利益を生んでいます。今期の会社計画も、日本は減益、海外は約2割の増益を見込んでいて、海外の伸びが前提になっています。
欧州は好調、北米は足踏み
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欧州は1年で利益が2倍以上になりました。アパレルを中心に取引先が広がっています。
中国も店舗を約60店まで増やし、利益は約8割増えて、北米とほぼ同じ規模に育ちました。中国は、大塚さんが現地の子会社のCEOを兼ねている地域です。
一方で、北米は前期比で減益でした。米国の関税の影響が約25億円あり、取引先の発注の遅れなどが続いているそうです。
ただ、SNSのインプレッションは前年比+25%、YouTubeの視聴者は約2倍と、キャラクターの人気自体は伸びています。2028年7月には、ワーナー・ブラザースによるハローキティの映画も公開予定です。
会社も8月の決算説明会で「下期の北米が重要」と話していました。ライセンスは案件が取れてから売上になるまで約1年半かかるそうで、成果が数字に出るまでには少し時間がかかりそうです。
北米では、子会社のCEOを兼ねていた元常務取締役(中塚さんとは別の人物)の不適切な報酬問題も起きました。会社は、本社による海外子会社の監督強化を再発防止の柱にしています。
北米の成長を取り戻すことと、海外の管理を立て直すこと。 中塚さんは、この2つを同時に任された形です。
キャラクター|ハローキティ頼みからの脱却
2025年7月の個人投資家向けIRセミナーによると、グローバル全体でのハローキティの比率は約35%で、10年前の約70%から大きく下がりました。
北米でも、シナモロールやクロミが伸びてきています。
「サンリオ時間」を見ると、グッズとともに過ごす「寄り添い時間」は1年で約1.45倍になりました。
一方、パークやデジタルで過ごす「夢中時間」は横ばいです。ゲームや映像に力を入れる長期ビジョンは、ここを広げるための計画でもあります。
我が家の通信簿
私たちとしては、中塚さんが担当している各分野を以下のとおり評価しています。
| 担当分野 | 評価 | ひとこと |
|---|---|---|
| 全社戦略 | ◎ | 5期連続の増収増益。中期経営計画の目標も前倒しで達成 |
| キャラクター | ◎ | ハローキティ以外のキャラクターが各地域で伸びてきた |
| 欧州・中国 | ◯ | 1年で利益が2倍以上。利益の柱に育ってきた |
| 北米 | △ | 関税で減益。下期の回復が最大の注目点 |
中国などアジアの成績は、現地の経営を担う大塚さんの記事で紹介しています。
株主総会で見た中塚さん
ここからは、私たちが総会で実際に見た中塚さんの様子です。
2026年の総会は、不適切報酬の問題で決算発表が延期されたあとに開かれました。
会場の前で車を降りた中塚さんは、株主の方に声をかけられても、あしらうことなく、頭を下げながら受け答えをしていました。
横柄な感じがまったくない、腰の低い人です。
総会では質疑の多くに辻社長が答え、中塚さんはそのほとんどにうなずいていました。
質疑応答要旨を見ても、2026年の総会の19問のうち17問に辻社長が答えています。
大塚さんはグッズのランダム販売の質問で1回補足しましたが、中塚さんが答えた質問はありませんでした。
社長との関係は悪くないように見えましたし、私たちはこの関係性が意外に大事だと思っています。
一方で、うなずくだけのイエスマンになりすぎないか、という心配もあります。
それでも、中塚さんはインタビューや講演では、サンリオ時間やキャラクター戦略を自分の言葉で語っています。
社長より年上の専務が2代目社長をきちんと立て、そのうえで組織ができている。総会では、そう感じました。
自社株は分割後換算で約6.3億円分
経営陣が自社株を持っていれば、株価が下がったときに株主と同じだけ痛みを負います。
私たちは、そこに株主との一心同体を感じます。
| 人物 | 持株数(2026年3月末) | 分割後に換算 | 評価額の目安 |
|---|---|---|---|
| 辻 朋邦 社長 | 2,488,141株 | 約1,244万株 | 約151億円 |
| 中塚 亘 専務 | 103,600株 | 518,000株 | 約6.3億円 |
| 大塚 泰之 専務 | 103,600株 | 518,000株 | 約6.3億円 |
| 社外取締役5人 | 0株 | 0株 | — |
有価証券報告書によると、中塚さんは譲渡制限付株式による報酬を2年続けて各2,800万円受け取っています(大塚さんも同じ額です)。持株はこの1年で4,600株増えました。
報酬の総額は1億円未満で、個別の金額は開示されていません。
取締役会には18回すべて出席しています。
2026年5月には、営業利益の成長率やTSR(株主総利回り)に連動し、原則として退任時に株を受け取る新しい株式報酬の導入も発表されました。
会社の成長と株価が、そのまま報酬になる仕組みです。
一方、社外取締役5人は全員が0株です。
株を持たない社外取締役には反対票を投じる、という考え方の投資家もいます。ここは今後の改善点だと思います。
これから見ていきたいこと
2026年9月現在、以下の点に特に留意しておこうと思います。
- 11月の決算:グローバル統括本部の担当になってから初めての海外の数字が出ます
- 下期の北米:関税の影響を抜けて、利益が再び伸びるか
- 海外子会社の管理:再発防止策がきちんと機能しているか
- 次の目標の示し方:中期経営計画をやめたあと、会社の成長をどんな目標で語るか
最後に
資料を読み込んでみて、2人の専務の違いがはっきりしました。会社全体と海外の方向を決めるのが中塚さん、国内とアジアで売上と利益をつくるのが大塚さんです。
総会で見た腰の低さと、6億円を超える自社株。私たちは、中塚さんが株主と同じ方向を向いている経営者だと感じています。
北米の立て直しと、海外の管理。引き継いだ宿題にどう答えるかは、11月の決算から数字で見えてきます。
ここから先は、数字で答えが出ます。11月の決算を楽しみに待ちたいと思います。

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